颯田医学奨学財団から

 日米の研修事情

                        東大  反田篤志

 昨年7月からニューヨークの病院で研修を始めて、様々な困難に直面すると共に、良くも悪くも米国医療の中身が見えてきました。ここでは、日米の研修の違いをいくつか紹介したいと思います。

 まず一つには、労働時間の短縮に伴うシフト制の研修が挙げられます。米国では週に80時間しか働いてはいけないため、担当患者さんという概念はあるものの、常にその患者さんの治療の責任を持つわけではありません。夜は夜間シフトの研修医が、休日はその日の当直研修医が患者さんをカバーします。日本のように常に病院から呼び出されるプレッシャーがなく、しっかり休みも取れるので、研修医の身体及び精神的健康が害されることは極めて少ないです。さらに、疲労から来る判断ミスも少なくなります。その一方で、研修医同士の申し送りが増え、患者さんの経時的変化を追いにくくなることから、日々変化する容態が把握できず、対応が疎かになる危険性があります。また、研修医にとっても、自分の患者さんに対して責任感を持ちにくくなると共に、継続的に診ることで臨床経過を学ぶという機会が少なくなります。

 二つ目に、専門分化が挙げられます。米国では病院内で働く医師数が日本より格段に多い上に、各専門科の医師が非常に充実しています。どの専門科にコンサルトしても、24時間以内に患者さんを診てくれます。ちょっとした分からないことなど電話で聞けるので、助かることも多いです。医師数が少ない日本に比べ、各専門科の視点からの意見が聞けると共に、多数の医師の介入が行えるため、診療における見落としが少なくなるという利点があります。複雑で難解な症例になると、このアプローチが力を発揮することも多いです。一方で、専門科への敷居の低さから、必要と考えられない症例に関しても、コンサルトを行う傾向があります。これは訴訟の多さからくるリスク回避のためと、別会計で支払われるコンサルトフィーを得るためという別の側面もあります。コンサルトが多数の専門科に及ぶ場合、主治医グループが主体的に総合的な判断を行わなければいけませんが、時に専門科の意見に大きく左右され、治療の方向性が掴めなくなることや、木を見て森を見ずといった方向に進むこともあります。研修医としては主治医と各専門科の橋渡しをする役目になり、意見が異なる場合に板挟みにあうことや、それぞれに何度も電話をする羽目になることがあります。

 日本では沖縄、米国ではニューヨークという、両国の特殊地域で研修をしている身ですので、一般化して物を言うのは難しいところもあります。とはいえ、現場での経験を通じて、以前は優れていると思えた米国研修の様々な点も、上記のように善し悪しがあることが分かってきました。まだ始まったばかりですが、両国の違いを楽しみながら研鑽を積んでいきたいと思います。

     

 

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